2022年7月15日金曜日

台湾の書籍を読んでみよう【3】幾米『ぎゅっ』

 ◆作品紹介◆

著者:幾米(Jimmy)

作品名:『ぎゅっ

    (擁抱



 台湾東部にある宜蘭県出身の幾米はイラストレーターであり絵本作家でもある。私個人は中学生のころに地元のイオンで買ってもらった初めてのちゃんとしたお財布が幾米のイラストのものだった(気づいたのは使い古したころの台湾語学留学時代)。
 分量としては絵本の域を大きく超えているのだが、1ページ1ページすべてカラーで幾米の絵に心にじんわり広がる温かみを感じ、織りなす言葉たちも彼の人柄を表すかのように柔らかく、読み進めていくうちに心が洗われるかのようで、まったく苦に思わない不思議な体験がそこにはある。また、途中で童謡「ぞうさん」の楽譜が出てくることによって、絵本に顕かな音楽が流れるというまた斬新な体験をすることになる。
 内容は、ある日とつぜんライオンのもとに降ってきたプレゼントの中にあった幾米の絵本をライオンが読み進めていき、自身は百獣の王として強くあったが一方でとても孤独だということに自覚し、最終的にプレゼントの送り主とあってハグを交わすという話だ。なかなか見たことない展開の仕方なので、一作品としてぜひ手にとってもらいたい。


◆翻訳してみよう◆

原文翻訳文

(※冒頭数ページ、文字のみ抜粋)
  [男の子] 這次一定要拜託你!
      今回は、頼んだよ!

  [フラミンゴ] 放心啦, 交給我囉。
                          安心して任せてね

  [男の子] 可以給我一個擁抱嗎? 讓我有信心能找到他。
      ハグしてくれる? 信じれば必ず彼を見つけられる

  [ナレーション] 一隻孤獨的紅毛獅,
                              微風徐徐的大草原上, 昏昏沉沉地睡了又睡。
                              他做了一個春天的夢, 又做了一個夏天的夢, 
                              再做了一個秋天的夢……
         赤髪の孤独なライオンが一頭、
         そよ風が大草原をなでる中、幾度も眠りに落ちていた。
         彼は春の夢を見ては、夏の夢を見た。
         そして秋の夢も……

  [ナレーション] 突然天上莫名其妙掉下來一個盒子, 
                              砰通一聲, 砸在他的腦袋上, 
                              把他從一個冬天的夢中驚醒。
                              怎麼會有這種怪事?
         おかしなことに突然空から箱が一つ落ちてきた。
         ポンッと音を立てて、彼の脳天をついて
         冬の夢から引き戻した。
         どうしてこんなにもヘンテコリンなことがあろうか。


◆本日の単語・表現◆

 放心」
 :日本語でいうところの「安心する」を指す。
  "安心" は心穏やかな状態を指す言葉なので、日本語の「安心」とは少しニュアンスが異なる。どちらかといえば「心置きなく~~」という使い方をするときに使うだろうか。

 給…一個擁抱
 :「…とハグする」
  ここらへんは英語文法と一緒ですね。"Give ... a hug"、まったく同じ。
  ねー。英語習うのむずかしくないんだろーなー(すぐ話が逸れる) 

 微風徐徐
 :「そよ風そよそよ」
  そよそよそよウルサイので、意訳でいいと思います。よ。
  中国語は形容詞を重ねてくるのですが、直訳して日本語を重くする必要はないかと。

 莫名其妙
 :「奇妙な」
  これよく使いますね。該当部分はおそらく「
莫名其妙(地)掉下來」形容動詞となってます。
  形容詞なら「很莫名其妙」で使います。違和感・不快感を感じる程度の奇妙さを表します。


◆読解ポイント◆

・中国語は時系列で文章を並べる
 ∟ 「他做了一個春天的夢, 又做了一個夏天的夢, 再做了一個秋天的夢……」
   ここがイチバン判りやすいのだが、同じ「夢を見る」ことを言っているが、
   ノーマル文の次に「又」でつなぎ、「再」でつなぐ。
   
「又」は基本的に過去にあったことをもう一度生じると使われる「また」、
   
「再」は基本的にさらに未来に生じると使われる「また」となる。
   いずれも過去のことを示しているが、一分の中でその時点での時系列順に並べられる。
   逆に言えば、時系列が間違ってなければ、永遠に一文を続けることも多分……


ほかに気づいた点,知りたい点,要望等あれば、コメントしてくださると助かります!

天天快樂, 萬事如意!!

0 件のコメント:

コメントを投稿